スサノオ

スサノオ情報

7月1日に、2回目の雪組「スサノオ」を東京宝塚劇場で
観劇しました。私は、木村信司(キムシン)氏の作・演出作品は
かなり好きなんですよね。
宙組「鳳凰伝」は、もう私の「ベスト・オブ・宝塚」だし、
花組「不滅の棘」も大好きな作品です。「アイーダ」も、
若干引っかかりはあったものの、楽しめました。なんとなく、彼の様式美と
フィーリングが合うのかも.・・と思ったりもするのですが。
今回の「スサノオ」は、残念ながら今までみたいには素直に楽しめなかったんです。

初回感想は日記でも書いているのですが、
和太鼓、白衣装の群舞、黒をベースとしたスタイリッシュな舞台、
民衆のコロスも雰囲気を盛り上げ、アニメチックな冒険活劇の味付け満載。
主役は綺麗な益荒男(ますらお)ぶりで、
脇を固めるアオセトナ様は怪しい色気ぷんぷん
(私の友人は水さんファンでないですが、「なぜ、まーちゃんが嫌がるのか
分からない。私なら喜んで『青い魂』に染められるのに」
とまで言っておりました。周辺には「喜び組み」にはいる者続出。笑)、
アマテラスは太陽神として包容力溢れる存在感、ヒロインイナダ姫は
父親が殺された後「もう泣かない」と立ち上がり歌う健気さ、と見事。
で、なんの文句があるの?という感じですが、最後の最後で、
日本創世記ちゃらちゃらめでたい、めでたいとまとめられてしまうと。
うーむ、考えてはいけない、いけないと思いつつ、
「天皇制は」「有事の際の武力行使は」という堅い単語が
頭を掠めてしてしまうのです。
アオセトナは、大和の民に滅びさせられた民族代表で、
「謝れ、謝れ、一生謝り続けろ」と強行に謝罪を要求し続ける。
ここで、また「拉致問題」「教科書問題」「南京虐殺」という
単語が頭に浮かんでしまう。これは、困った。
いや、滅ぼされた国の民が、大和の影として存在し続けるというなら
その哀しみを、八岐大蛇として生きていく情念のようなものを
もっと掘り下げて、ストーリに絡ましてくれれば
それはそれで面白かったろうに。
アオセトナが大蛇に変身して襲いかかり(ここの演出も今回出演者の多さを
生かして面白かったですね。1階席だと「へびかな?」って感じですが、
2階席ならかなりはっきり8頭の大蛇に見えたと思います)、
それをばっさばっさとスサノオが斬り殺していくという冒険活劇舞台の
おもしろさの中に、消化不良の直接的な単語が並べられると、
結果として面白味が損なわれたのでは?

どうも、こんな風に思考がワープ(注1)してしまうのは、
大健闘しているのですが、主役二人の演技が少し単調だったことも原因かも?
朝海ひかる(コムさん)演じるスサノオは、本当に綺麗で凛々しく、
かつおねえちゃんに頭の上がらない甘えん坊、乱暴者だけどうじうじした感じも
良く出ていましたし(「立場が人を作る」って言うのは確かにあるのだろう、
というのは今回のコムスサノオを見ての感想)、
舞風りら(まーちゃん)のイナダヒメは対等にスサノオと渡り合って、
物怖じせず疑問を口にするのも、小気味よく(ショーの彼女のダンスも、
男役がリードする娘役ダンスと言うよりは、対等なカップルという感じで好きです。切れがあるダンスで見ていて気持ちがいい
ですね、)、
素直な芝居は冒険活劇風味付けにはぴったり!

ただ、一本調子の芝居が、喚起性の高い単語と合体すると、
結果としてワープが発動してしまうようです(これは、「単語」の意味に
ついついこだわってしまう私だけかもしれません。
観劇中、「ああ。ワープだ。ワープが始まった。波動砲がつかえなくなる。
迫りくるデスラー艦隊!どうする??」状態に陥ること幾たびか)。
いや、宝塚なのだから、難しいメッセージ性は別にして、純粋に舞台を楽しめば、
というご意見も多く、もっともだと思います。
私も純粋に「コムスサノオ、綺麗だな」「水アオセトナ、どきどきするわ」と
楽しめれば良かったのですが、そうしたくてもついつい、
ワープが始まってしまうんです(涙)。
別に、古事記や日本神話を題材にとったからといって、全てがタッチーな話に
なるとも思えないのですが。

どの国でも、神話の世界は神様が人間くさく、結構我が儘で、でも原始的な
楽しさに満ち満ちているのだから、神話の楽しさを再発見させてくれて、
日本人のルーツにも想いを馳せさせてくれるようなお話だったら楽しかったのに。
古代神話という本来おおらかで豊かな世界が、現実の世界と中途半端に合体して
矮小化されてしまったのは残念!
でも、もちろん舞台全体としてのレベルは高く、
私的にはワープさえ止められれば、それなりに楽しめた舞台でした。はい。

 ところで、2回目観劇で断然注目してしまったのがアマノウズメを
演じていた音月桂(キムちゃん)。
「男、女どっちだと思う?どっちだっていいじゃないの」
って裾をまくり上げて、格好いい。なんか、ずっとふてくされていて、
「ふくれっつらのプリンセス」って感じでしたね。
新人公演では主役のスサノオを演じていて評判が良かったようです。
ちょっと、見てみたくなりました。芝居ではうまさが光るのですが、
ショーで改めて注目してみると「少し癖のある」美形タイプ。
男役としての、自分の見せ方のスタイルが、独特。よく言えば個性的、
あまりいい表現でないとアクがある?
好き嫌いが分かれるかもしれませんね(他の作品を見ていないので、
あくまでも本作品の印象です。もし、違っていたらごめんなさい。
でも、私はこういうタイプ好きです)。

雪見の楽しみが、また増えました。

注1)ワープとは、時空をまげて高速移動する現象。
多分、SF用語だと思いますが、一定年代以上の人には、アニメ「宇宙船艦ヤマト」と直結する単語。
ちなみに、ワープの最中には、一切の攻撃力が奪われてしまうので敵艦の前では丸裸状態。