バラの封印

バラの封印

東宝宝塚劇場で、紫吹じゅん(りかさん)さよなら公演にあたる
「薔薇の封印」(小池御大作演出)を娘(10歳)と観劇しました。
ストーリは、良いバンパイア(しぶじゅん演じるフランシス)と
邪悪なバンパイア(彩輝直演じるミハイル)が悪の力の封印の鍵となる
5輪の薔薇を探して、時を超えてさまようというお話です。
時代を超えるので、ルイ14世もナチス親衛隊もでてきます。
これを聞いただけでも、ポーの一族?夏への扉?(冷凍カプセルもどきは
でてくるしね)時をかける少女?その他諸々ブラッドベリーにゴシック
ロマンをかき混ぜたような雰囲気。キャバレーも混じっているな。
皆川博子「死の泉」も(親衛隊の生体実験医師出てくるし)。

そんなに期待していなかっただけに、思いがけず、面白かったです。
しぶじゅんに対して、それほど思い入れはない私で、最初銀橋で歌うのを聞いて
「あちゃー」と思ったのですが(ごめん)。
亡命ユダヤ人を助けるアジトとなるクラブでシャンデリアで歌うシーン、
捕らわれて冷凍カプセルで会話をするシーンで、かなりやられました。
体力の限界で物憂げ、自分が苦しいのに、「やれやれ、困ったお嬢さんだね」
って感じが、たまりませんでしたわ(爆)。同じ役をたかちゃんが
演じたら、苦しい!って言うのが全面か、明るくお嬢さんに「かはは」と
笑いかけそうです(それはそれでいいんですがね)。
こういう男性を演じさせたらもう右に出る人はいませんね。加えて、
イタリアンスーツ(多分)で前をはだけさせてストールを垂らして
似合うのは宝塚ひろしといえども、貴方だけです(断言)。
とにかく私は、2場がめちゃ気に入りました。
ナチスの台頭期のベルリンの気怠い退廃的雰囲気が個人的にも
好きなので(この時代を背景として名作は多いですよね。「キャバレー」も。
日系クォータでナチスドイツをだましながら生き抜こうとした兄妹の
話としては福井晴敏「終戦のローレライ」お奨め)
紗のかかった幕がゆっくりあき、タンゴを踊る紳士淑。
親衛隊突入で、「ヒューズをねらえ」、ドラァイ、ツヴァイ、アインス..
うーん、ドイツ語がこんなに格好良く聞こえたことありませんでしたわ。
シャンデリアの上で、「こんな時代だからこそ生き抜くんだ」と
生きていることに疲れたような雰囲気のまま語るしぶじゅん。
あー、このシーンは私の宝塚名場面トップにはいるかもしれない!
「ヴァンパイアはシャイな奴」って。
いえいえ、あなた、しっかり口説いていますよ。
とてもシャイには見えないのもご愛敬。

遡って現代の場面。
「あー、うん..」言いたい言葉が、つなげる言葉が、みつからない。
そのもどかしさも、けだるさに押し流されて結局言葉を探すことも
できなず所在なさげに手が宙を漂う、って感じの間がつぼでしたね。
もともと、しぶじゅんって、もったいつけたような言い回しが多いよねー
と思ってはいたんですが、今回これが見事に嵌りました。
冷凍カプセルの中で、苦笑が途中でとまってしまう、っていうものも
なんか良かったですわ。きゃん、きゃん。
 ミハイルの蛙をつぶしたようなしゃべり方も面白かったし、
なんといってもあの物憂いカプセルしぶじゅんは絶品。
眼鏡の伊達男大空祐飛君も忘れがたい印象(眼鏡の男性ってすっごく好きなんです)。
タンゴを踊る姿が、端正なのに退廃的なムードが一杯で、これまた
そそられました。
というわけで、思いがけず嵌りまくり、年度末の忙しい時期にもかかわらず、
東宝通いをしてしまいました。
紫吹じゅん様、新しい世界でのますますのご活躍を
お祈り申し上げております。
                                  2004.3.18